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離婚時の財産分与を利用して差し押さえ逃れ!?元芸能人が逮捕された理由とは

更新日:2024年03月29日
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夫婦が離婚する時、基本的には協議の上で結婚生活の中で築いた財産を分与します。財産分与の割合は、夫婦それぞれが資産の構築にどの程度関与したのか、夫婦で協議して取り決めます。
しかし、この財産分与を利用し、脱税や資産の差し押さえから逃れようと画策する輩がいます。そこで、最近逮捕された元有名芸能人の例を取り上げながら、問題点や注意点を見てみましょう。

1.離婚時の財産分与は税金がかからない

離婚時の財産分与は、基本的に税金がかかりません。それは国税庁のウェブサイトでも明記されています。
国税庁のウェブサイト

婚姻関係中に築き上げられた夫婦の資産は共同資産であり、双方の働きによるものです。
仮に、夫婦が10年間の婚姻中に10億円の資産を築き上げ、離婚時に会社員の夫と専業主婦の妻で5億円ずつ分けることになったとします。また、夫名義の銀行口座に10億円入っていたものを、妻の銀行口座に5億円入金したとします。
この場合、法律的にはどのような扱いになるのでしょうか。
まず、専業主婦の妻も、財産形成に何らかの形で貢献したとみなされます。そのため、夫が預金のない妻に5億円を分け与えたとしても、その5億円は譲渡税の対象にはならず、非課税扱いになります。

2.有名芸能人K・Hが1月に逮捕された罪状とは

財産分与は婚姻関係を結んだ夫婦双方が所有する平等な権利です。
しかし、財産分与を悪用し不当な財産の贈与を行って損害賠償の支払いを逃れようとした事件が発覚しました。
元有名芸能人K・Hの偽装離婚及び偽装罪です。
この元芸能人は現在、恐喝容疑などで収監中のK・Hです。恐喝罪で収監中ながら余罪として不動産会社社長から4億円の損害賠償請求を受けていました。
K・Hは損害賠償で自分の資産が没収されることを防ぐため、収監される前の2017年に離婚し離婚時の財産分与で自身の持つ「マンション」や「ビル」などの所有権を全て妻に移していたのです。
損害賠償請求はあくまで元芸能人K・Hに対するものであり、妻に対して行われたものではありません。そのため、妻がK・Hから分与された不動産を差し押さえることはできないのです。
しかし、この1月に元芸能人K・Hは強制執行妨害などの容疑で逮捕されました。
それはなぜでしょうか。

3.偽装離婚、そして過剰な財産分与とみなされた

今回の元芸能人K・Hの離婚は偽装とされています。夫婦は2017年に離婚届を出したものの、これはあくまでも見せかけであり「婚姻関係」は今も続いているとの見方があります。また、現在服役中の元芸能人K・Hと元妻の婚姻関係がどのようなものか、実は裏でつながっていた可能性が高いとする見方が有力です。なぜならば、不動産の譲渡を受けた元妻が、元芸能人K・Hの口座に家賃収入を振りこんでいる事実が確認されたからです。
そのため、差し押さえを逃れるために不動産の名義を元妻にしたものの、上記の動きから、元芸能人の所有が事実上続いていることが発覚したのです。その結果、資産の差し押さえに対する強制執行妨害の容疑がかかりました。
また、離婚時の財産分与の割合については、国税庁では先に挙げたページの中に、以下のような記載があります。

・分与された財産の額が婚姻中の夫婦の協力によって得た財産の額やその他すべての事情を考慮してもなお多過ぎる場合 1
この場合は、その多過ぎる部分に贈与税がかかることになります。

・離婚が贈与税や相続税を免れるために行われたと認められる場合2
この場合は、離婚によってもらった財産すべてに贈与税がかかります


離婚時にK・Hが所有する資産の大半を妻に財産分与したことから、様々な事情を加味したとしても、財産分与の割合が大きいと判断されたのです。
夫婦において大半の収入を稼ぎ出していたのは、現在収監中の元芸能人K・Hです。逮捕された上での離婚の場合、慰謝料が加味されることはありますが、それを含めてもほぼ全ての財産を妻名義に変更するということは、離婚が財産分与目的、すなわち贈与税の支払いを回避するために行った可能性が高いです。

つまり、元芸能人K・Hは
・損害賠償逃れの資産隠し
・不当な割合での財産分与
2つの点で問題があったと言えます。

4.あからさまな資産譲渡は税務署も見逃さない

このようなあからさまな贈与税逃れは、税務署も見逃すことはありません。特に今回の件では、K・Hは元芸能人であり、一般社会から注目を集める人物です。2019年1月に報道が行われる前から、離婚は偽装であり、財産隠しのための離婚ではないかと噂に上がっていました。
現実的に自分の資産を会社名義にすることで節税に努めたり、不動産を会社所有にすることで相続税を減らしたりすることはありますが、これらも法に則って認められた節税対策です。

今回のように資産隠しを目的とした悪事が発覚すれば、新たな罪状によって懲役に服する期間が長くなり、適正な分与以外の資産が差し押さになる可能性が極めて高くなります。

5.偽装離婚のつもりが、本当に離婚になってしまうことも

そして、もう一つの注意点が、当人は偽装離婚のつもりだったものが、元妻にとって本当の離婚になってしまうことです。
特に刑務所に収監され、服役中である場合、身内とは面会でしか会うことができません。元妻の気持ちが離れたとしても、それ自体はごく自然なことでしょう。そして、資産の名義は元妻のものに変わっているのですから、税務署に指摘されたり、逮捕状が出されたりしない限り、資産をどう使おうが全くの自由です。
収監される側としては、偽装離婚で財産分与を行い、財産を維持していたつもりなのでしょう。しかし、頼みとするのはやはり、心が移ろいやすい人間。別れた妻の心変わりで、いつ資産を全て失ってしまうのか、元パートナーとしては全く見当がつかないのです。

そういった点を考えると、偽装離婚による度を越した財産分与は、資産を一気に失ってしまうリスクが非常に高いのです。

あくまでも正当な範囲の財産分与であれば、今回の件は問題視されなかったかもしれませんし、出所後に元配偶者と再婚することで、財産が戻ってくる可能性も残されていたでしょう。

しかし、悪質な資産隠し、差し押さえ逃れ、偽装離婚は誰の目にも明らかでした。

離婚時に財産分与する際は、これまでの内助の功に報いる形で、適切な割合で財産を分与しましょう。
また、不動産がローンの支払い状況や資産価値に変動が起こりやすいことなどを考えると、離婚時の時価で売却し、現金化してしまうことをおすすめします。不平や不満が起こりにくく、後々の禍根にも発展しません。

離婚を検討している場合、まずは所有する不動産の査定を行い、売却金を夫婦で公平に分け合うのが良いでしょう。

離婚に関する困りごとは弁護士へ相談を

離婚はさまざまな法的要素を伴います。少しでも不安がある場合は、弁護士に相談することをおすすめします。

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