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離婚×少子高齢化=老人から子への多額の『相続』社会ニッポンのアイキャッチ

離婚×少子高齢化=老人から子への多額の『相続』社会ニッポン

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 離婚を考えた時に頭に浮かぶのが、「相続」問題。もちろん離婚した相手の相続が出来るわけではありませんが、お子さんがいた場合はいかがでしょうか。子どもには充分な相続をさせたいものですが、離婚後に相手方が再婚するとなると、気になる部分もままあります。
 そこで今回は、離婚から生ずる相続に対する諸問題を検証していきます。

相続とは何か

 相続という言葉を聞いたことがない方はいらっしゃらないと思われますが、そもそも相続とは何なのでしょうか。民法では、相続をこのように定めています。
「第896条:相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身の身に専属したものは、この限りではない。」
 このように相続は、条文だけ見ると、堅苦しくて読むのも一苦労です。ですので、これを分かりやすく言い換えると、
相続人は、相続してくれる人が亡くなった時から、その人の権利と義務を受け継ぎます。ですが、その亡くなった方自身だけに属する特有の権利は、受け継がれないこともあります。
ということになります。

相続人と相続の種類

 法律上相続人だと認められる関係者は、
1.配偶者:※法律婚のみで、内縁や事実婚は含まれません
2.:嫡出子・非嫡出子、養子
※嫡出子は法律上の夫婦関係にある男女の間に生まれた子を指し、非嫡出子とは法律上の婚姻関係にない男女間に生まれた子をいいます
3.直系尊属:亡くなった人の両親等
4.兄弟姉妹
と定められています。そして、亡くなった人との関係性から、相続の分配率が異なってきます。離婚すると配偶者の相続権は当然なくなりますが、実子に対する相続権は失われません。
 

『法定相続』

 法定相続における"法定相続分"とは、民法の規定によって定められている相続分を指します。

<相続人の分配>
 その民法というのが第900条で、法定相続分は

1.配偶者1/2:子1/2
2.配偶者2/3:直系尊属1/3
3.配偶者3/4:兄弟姉妹1/4

と定められています。なお、配偶者がいなければ、子が単独相続します。つまり、既に離婚した元配偶者が死亡した際には、子の親権がどちらであれ、すべての相続分を相続出来るのです。(子がいなければ、2⇒3の順位で相続がなされます。)

赤ちゃんを見つめる男性

<相続権の剥奪・喪失>
 このように受け継ぐ相続権ですが、以下の3つの理由から、相続権を失うことがあります。

1. 相続欠格:相続欠格になる5つの事由

・故意に被相続人又は同順位以上の相続人を死亡、または死亡させようとした場合
⇒殺人罪だけでなく、介護が必要な被相続人の遺棄罪も当てはまります。
・被相続人が殺害されたのを知って告発や告訴を行わなかった場合
⇒殺害者をかばうために告発・告訴を行わなかった人が該当します。
・詐欺・強迫によって被相続人の遺言を取り消し・変更を妨げた場合
  ⇒被相続人が遺言変更等の再考を知り、それを詐欺や恐喝で妨害した場合
・詐欺や強迫によって被相続人の遺言を取り消し・変更・妨害させた場合
  ⇒騙したり脅したりして遺言を作らせた場合
・被相続人の遺言書偽造・変造・隠蔽した場合
  ⇒自分に不利な遺言書を発見し、新たな遺言を作ったり隠したりした場合

2. 相続廃除:相続廃除の対象は遺留分を有する推定相続人のみです。

・被相続人を虐待した
・被相続人に対して、極度の屈辱を与えた
・被相続人の財産を不当に処分した
・ギャンブル等を繰り返し、被相続人に多額の借金を支払わせた
・浪費・遊興・犯罪・反社会団体への加入、異性問題を繰り返す等の親不孝行為
・重大な犯罪を起こし、有罪判決を受けた(一般的には。5年以上の懲役判決)
・愛人と同棲する等の不貞行為をする配偶者
・財産目当ての婚姻関係
・財産目当ての陽子線組

3. 相続放棄:家庭裁判所に申述

初めから相続人とならなかったものと見なされる。(遡及効)
※遡及効…法律や法律要件がその成立以前に遡って、遡及的に効力を持つこと
 以上のように、離婚後に子が元配偶者に対して暴力をふるったりすると、その子ども自身が相続権を剥奪されるといった事態を招くことになります。
 それでなくとも、上述の行為は民法の中心的理念である『信義則』に激しく反しています。刑法としても認められない点が多いので、絶対に許されざる行為であることに間違いありません。

<遺産分割の時期と方法>

 遺産分割とは、「相続共有を解消し、個々の相続財産を各相続人に分配して、その単独所有にすること」です。つまり、「みんなで持っている共有の相続財産を、一人ひとりに分けよう」ということです。その一人ひとりに、当然前夫との間の子は該当します

 遺産分割は相続人による請求で始まります。方法としては、

1.現物分割:現物をそのまま分割する方法
2.換価分割:相続財産の中の財産を売却し、その代金を分割する方法
3.代償分割:特定の相続人が財産を取得し、他の相続人に金銭を支払う方法

で、906条「遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする。」という基準の下で分配されます。
 こちらもこれだけ読むと難解ですが、注目していただきたいのが、「その他一切の事情を考慮」という文言です。906条はだらだらと例を挙げていますが、つまりは、「みんなの状況に応じて」という、いわゆる"任意規定"なのです。

離婚にまつわる"子の福祉"

離婚による相続の問題で、いちばん複雑で重要にしたいのが『子の福祉』です。ここでいくつかの起こりうるパターンを挙げてみます。

<ケース①>
○元配偶者に親権をとられた
 子は第一順位の相続人です。そのため、
・離婚の際、親権・監護権を取られた
・一緒に住んでいなかった
・連絡がずっと途絶えていた
という状態であっても、相続を受ける立場にあります

<ケース②>
○元配偶者が子どものいる人と再婚した
 自分と血がつながっていない連れ子に対しては、再婚しただけでは戸籍上相続人にはなれません。連れ子に相続をさせるためには、養子縁組をする必要があります。
 もし養子縁組をする前に、母親、つまり再婚相手が亡くなった場合、連れ子はまだ元配偶者の戸籍に入っておらず、法的に実子になることが出来ません。その点を注意して、早めに養子縁組は済ませておきましょう。

<ケース③>
○元配偶者が再婚し、子どもが生まれた
こちらも、再婚相手が1/2、自分と相手方とのと子1/4、再婚後の子が1/4ずつの法定相続分を得る、ということになります。
 しかし中には、「再婚後に前妻に親権を取られた子どもに相続させたくない」と思う人が少なからずいる、というのも事実です。相続させないためには、『遺言』を遺さねばなりません。その場合自分と相手方との子の取り分はゼロになってしまいますが、前妻との子とて、『遺留分』は存在します。
 では、そんな『遺言』や『遺留分』について、ここから詳しくご説明します。

『遺言相続』

 とても一般的な、"死亡時に遺言があった場合の相続"を見ていきます。

<遺言の要件と方式>
 まず初めに、遺言は、遺言能力(単独で、有効に遺言を行うことが出来る能力)が必要です。そのため、意思能力がきちんとあれば、15歳を過ぎれば遺言能力が認められます。
 また、単独の要式行為(単独:ひとりきりであること、要式:書面等が必要であること)であるため、たとえ夫婦であっても、共同遺言(誰かと同じ紙に遺言を書くこと)は無効になるのが注意点です。
 なお、同一の証書でなければ、ホチキスで留めてあっても共同遺言には当たらない、という判例があります。

<遺言の種類>
 そんな遺言にも、種類があります。

遺言 普通方式 自筆証書遺言
公正証書遺言
秘密証書遺言
特別方式 応急時遺言 一般応急時遺言
船舶遭難者遺言
隔絶地遺言 伝染病隔離者遺言
在船者遺言

ここでは、多くの方が使われるであろう普通方式の遺言について詳しくご説明します。

○自筆証書遺言…4要件

 自書:遺言者の意思があれば、添え手があっても自書として有効
    外国語、速記文字は可、タイプライター・PC等は不可
 日付:記載日と作成日が相違しても、誤記であることが明確な場合は無効にはならない
 氏名:雅号・通称・氏/名、のみでも可
 押印:拇印、サインも可
    封筒の綴じ目の印のみでも可

○公正証書遺言…5要件

●2人以上の証人の立会い(盲人でも可)
●遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授(外国語は可、身振り手振りは不可)
●公証人が口授を筆記して、遺言者に読み聞かせ又は閲覧させる(タイプライター・PC可)
●遺言者及び証人が筆記の正確なことを証人した後、各自署名・押印
●公証人が遺言証書が以上の方式に従った旨を付記して、署名・押印

○秘密証書遺言…4要件

●遺言者が、その証書に署名・押印(タイプライター・PC可、但し署名は自署)
●遺言者が、その証書を封じ、証書に用いた印章をもって封印
●遺言者が、公証人+証人2人以上の前に封書を提出、自己の遺言書である旨+筆者氏名・住所を申述
●公証人が、封書提出日+遺言者の申述を封紙に記載、以後者及び証人と共に署名・押印

<遺言の効果>

遺言は、まずは「遺言者の死亡時」、もしくは「条件があれば、遺言者の死亡後の条件の成就時(願いが叶ったり、目的が達成された時…孫が小学校に入学したら、等)」、に効力が発生します。
しかし、遺言が法的に発動しない場合があるため、その例を示します。

法律行為一般として
・無効⇒錯誤…間違えていた、勘違いしていた、といった場合、無効になります。
・無効⇒公序良俗違反に反する内容は無効です。
・取消⇒騙されたり(詐欺)、無理強い(強迫)して書かされた内容は取り消されます。

遺言特有として
・無効⇒方式違反の遺言・遺言能力の欠如(の判明)があると無効扱いとなります。

撤回
・「遺言の方式」による撤回、前の遺言と異なる新たな遺言の発見、遺言書又は遺贈の目的物の破棄

赤ちゃんを抱っこする男性

③遺贈(いぞう)

 「遺贈」という言葉をご存知でしょうか。遺贈とは、遺言によって無償で財産的利益を他人に与える行為、つまり遺言で行う贈与です。また、遺贈によって利益を得る人を、受遺者(じゅいしゃ)、と呼びます。

遺贈の種類

 そんな遺贈には、2つのパターンがあります。それは、
○包括遺贈:「全財産を▲▲に遺贈する」というような遺言書がある場合
○特定遺贈:「甲土地を▲▲に遺贈する」というように、特定の財産を指定している場合
です。

<包括遺贈>
 包括遺贈の効力は、相続開始時に物件的に発生します。"物件的に"というのは、遺言を遺した人の死亡と同時に受遺者に即、当然に、帰属するということです。
そして、遺贈義務者(=相続人)に対する履行請求権(義務を果たすよう請求できる権利)を持ちます。

<特定遺贈>
 特定遺贈は特定受遺者が継承出来る遺贈で、こちらも物件的権力を有します。効力の発生も、相続開始時と同じですが、包括遺贈との相違点は、債務の遺贈がない点です。

遺贈と相続

 遺贈は、遺言で財産の全部又は一部を「相続人又は相続人以外の人に無償で贈与(譲渡)すること」で、遺言者が死亡した時に発生します。これに対して相続とは、相続人に対してのみ行われる行為をいいますので、「相続人以外の第三者にも遺産を渡せるか」「相続人しか遺産をもらえないか」が大きな違いと言えます。まとめると、
1.相続:法定相続人(被相続人の親族)に遺産を渡すこと
2.遺贈:遺言書によって、被相続人の死後に財産を無償で渡すこと(第三者可)
3.贈与:被相続人が生きている間に財産を無償で渡すこと(第三者可)
ということです。

④遺留分制度

 遺留分制度とは、一定範囲の相続人に対して、被相続人の財産の一定割合について、相続権を保証する制度を指します。
例えばドラマ等で「娘の△△にすべて相続させる」というような遺言がさらされるシーンがありますが、法律には「遺留分」という権利があり、全額△△に想像させることは実は出来ないのです。

<遺留分の権利>
 遺留分の権利者は、配偶者、子、直系尊属で、兄弟姉妹が含まれないことがポイントです。
 そして、その権利は、放棄が可能です。相続開始前であれば家庭裁判所の許可が必要ですが、相続開始後であれば自由に放棄することが出来ます。
 また、遺留分の権利は、相続開始+減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から1年、相続開始の時から10年、という時効があるので注意が必要です。

<遺留分の割合>
 相続人が直系尊属のみの場合、遺留分は1/3とされ、それ以外は1/2と定められています。ですが、相続人が複数いる場合には、当然分配されます。例を挙げてみましょう。

「被相続人が、配偶者A、嫡出子B・C、非嫡出子Dを遺して死亡した場合」
配偶者A:1/4、嫡出子B:1/10、嫡出子C:1/10、非嫡出子D:1/20、と遺留分1/2は分配されます。

 これを少しいじってみましょう。

「被相続人が、配偶者A、嫡出子B・C、非嫡出子Dを遺して配偶者Aに全額相続させたいという遺言を遺して死亡した場合」
配偶者A:1/4、嫡出子B:1/10、嫡出子C:1/10、非嫡出子D:1/20、と遺留分1/2は分配され、遺言の"全額"は残りの1/2になるので、配偶者A:3/4、嫡出子B:1/10、嫡出子C:1/10、非嫡出子D:1/20になります。

<遺留分の算定>
遺留分の割合が分かったところで、では、遺留分はどのように算定されるのでしょうか。それがこちらです。
(1)相続人の財産」+「(2)贈与」-「(3)債務の全額」という数式が成り立ちます。

これらを一つ一つ見ていくと、
積極財産(債権のみ)
期限のない、共同相続人にした特別受益(贈与・遺贈)
公法上の債務(税金等)も含む
ということになります。

まとめ

 以上、相続に関する諸問題を列挙してきました。そこで、何点か具体的な例示をしてみたいと思います。

<事例①>
「離婚後間もなく元夫がなくなりました。私たちの間には子どもが1人います。元夫の遺産は900万円です。相続はどうなりますか?」
⇒配偶者がいなければ子が全額相続するので、子どもに900万円が遺されます。

<事例②>
「離婚後間もなく元夫がなくなりました。私たちの間には子どもが2人います。元夫の遺産は900万円です。相続はどうなりますか?」
⇒配偶者はいないため、子どもたちはそれぞれ450万円を相続します。

<事例③>
「離婚してしばらくしてから元夫が再婚し、亡くなりました。私たちの間には子どもが1人います。元夫の遺産は900万円です。相続はどうなりますか?」
⇒新しい配偶者が1/2、実子が1/2となるため、450万円ずつ相続します。

<事例④>
「離婚してしばらくしてから元夫が再婚し、亡くなりました。私たちの間には子どもが1人いて、再婚後に子どもが生まれたそうです。元夫の遺産は900万円です。相続はどうなりますか?」
⇒新しい配偶者が1/2を受け取り、子が残りの1/2を分けるので、配偶者が450万円、子がそれぞれ225万円ずつを相続します。

<事例⑤>
「離婚した元夫が遺言を遺して亡くなったそうです。その遺言には私たちの間に生まれた子には一銭も相続させないと書いてありました。元夫の遺産は900万円です。相続はどうなりますか?」
⇒民法では"遺留分"が明記されているので、相手方の配偶者や子どもの数によって額は異なりますが、いくらかの相続をする権利は保証されています。

<事例⑥>
「夫が離婚届を提出するために出かけたところ、交通事故に遭い亡くなりました。夫の遺産は900万円です。相続はどうなりますか?」
⇒離婚の成立は離婚届の受理時です。全額相続出来ます。

<事例⑦>
「離婚した元夫が亡くなりました。私たちの間には子どもが2人います。元夫の遺産は自宅です。相続はどうなりますか?」
⇒自宅という不動産を現物分割することは出来ないため、①換価分割(子ども2人で相続財産の中の財産を売却し、その代金を分割)、もしくは代償分割(子のどちらかが財産を取得し、他の相続人に金銭を支払う)のいずれかで相続します。

<事例⑧>
「離婚した元夫が亡くなりました。私たちの間には子どもが1人いますが、子どもは元夫の相続をしたくないと言っています。どうすればよいのでしょうか?」
⇒相続放棄が出来ます。家庭裁判所に申述することにより、初めから相続人とならなかったものと見なされます。

<事例⑨>
「私に対するDVで離婚しました。元夫が先日亡くなった時、あまりにもひどい仕打ちを受けていた私を見ていた子どもが、元夫に対して暴行を加えたことがあると発覚しました。子どもは相続権を失ってしまうのでしょうか?」
⇒推定相続人が被相続人の冷遇や非道な行いに我慢しきれず暴行を加えた場合、「相続廃除」の事由として認められない確率が高いです。

<事例⑩>
「離婚した元夫が亡くなりました。元夫は私たちの子に対して、包括遺贈をするという遺言を遺していました。夫の財産は、(おそらく450万円ほどの価値がある)自宅と、事業に失敗した900万円の借金です。このような場合どうすればよいですか?」
⇒包括遺贈は債務も引き継ぐので、よっぽどの事情がない限り自宅は諦めて、包括遺贈を放棄した方がよいでしょう。放棄は3ヶ月以内に行います。

頭を抱える老人男性

終わりに

 ここまで離婚と相続の話をして参りましたが、いくらそれまでの生活を支えていたとしても、離婚することによって相続がゼロになるという点には違和感を抱く方もいるのでは、と思います。

 例えば20年間介護生活を続け、耐えきれなくなった離婚の翌日に配偶者が亡くなっても、介護していた相手方には一銭も相続がなされません
 「相続したいならば別れるな」、といったご意見もあるかと思います。しかしそれは換言すると、「離婚しないのは相続のため」とも受け取れ、
その方が愛情がないように思えます。

 進む高齢化の中で、日本は相続大国になるかもしれません。その時に後悔しないための"相続" に、本記事がお役に立てれば幸いです。

この記事の著者

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編集部

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