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自営業に嫁ぐとは:家庭と、仕事と、旦那と、離婚。

更新日:2024年03月11日
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夫が自営業の場合、家族で暮らしていくのもやっと、というケースはよくあります。そんな低収入な夫と離婚するとなると、財産分与、親権、慰謝料、そして借金等の分配はどのようにされるのかが不安になるところです。

自営業で夫婦仲が悪くなる?

 まず、自営業の夫と一緒になる時に、一定の心構えをしておくことは、相互理解のために大事なことです。では、どう心構えが足りないと、夫婦仲が悪くなってしまいがちなのでしょうか。

公私混同

 1日中一緒にいると、公私の区別がつきづらくなりがちです。つまり、仕事の話を家庭に持ち込んでしまうのです。それはよい時は連帯感を感じたり達成感が得られますが、悪い時は仕事上のトラブルにも関わらず、家庭に持ち帰ってしまい、ピリピリとした空気になってしまいます。
 これは、夫婦2人ならまだしも、子どもがいた場合、教育的にとてもよくありません。

1日中一緒

 夫婦とは言え元は他人。1日中一緒にいれば、嫌気がさす時もあります。勤務中でも、家庭内でも、口を開けばつい仕事の話……。こうなると、気が休まる時がありません。

負担の適切な分担

 料理・洗濯・掃除……これらは、自営業で仕事量が一緒にも関わらず、つい妻の担当、負担となってしまいがちです。これには、「同じように働いているのに、どうして私ばかり……」と妻に不満が募るのも、仕方ありません。
 家事に関しては、夫も常に気を配っておく必要があるのです。

自営業の夫と離婚する

 上述のような変わらない日常に息がつまり、離婚を視野に入れてくることもあるでしょう。“自営業”の夫と離婚するのは、“ビジネスマン(サラリーマン)”と離婚するのと、どう違ってくるのでしょうか。

妻はタダ働き?

 妻が自営業の夫を手伝って共に働いている場合、妻に給与が支払われていない場合があります
 これは、離婚の話し合いの時に必ずきちんと清算しなければなりません。受け取るはずだった給与が全て夫の口座に振り込まれている、という事実を主張し、妻のタダ働き分を請求しましょう。

義両親と夫による自営業

 特に義両親が絡んでくると、“嫁が家業を手伝うのは当たり前”だとされがちです。しかも、帳簿上には妻も給与を受け取っていることになるものの、実際には自由になるお金を報酬としてもらったことすらない……。いつの日か離婚したいと心に決めていても、実際はそのためのお金を蓄えることすら難しい、というのが現実です。

離婚=退職

 離婚を機に夫の自営業手伝いを辞めるのであれば、夫婦とは言え、退職手続を取る必要があります。これが何を表しているかというと、従業員の1人として退職するので、退職金を受け取る権利があるということです。

呆れられた男性

自営業の夫と借金

 事業のために借金を肩代わりしていた場合、離婚ではその借金はどうなるのでしょうか。

借金には、2つのタイプがあります。

 2種類のタイプというと、
○生活のための借金
○事業のための借金
が挙げられます。このうち、「夫婦が生活するためのお金として借り入れたもの」であれば、財産分与の対象になります。例えば、「マイホーム購入のための住宅ローン」「子どもの学費のためのローン」等です。
 対して、事業のための借金については、財産分与の対象になりません。つまり、妻名義で借金をしていれば、その弁済責任は離婚後も妻にあるということになります。

離婚調停にて主張

 妻としては、夫の事業の借金を離婚後も払い続けていかねばならないというのは、耐えがたい、問題です。このような場合は、離婚調停で主張しましょう。
 離婚調停はフレキシブルです。妻が借金の弁済継続に納得出来ないのであれば、きちんと調停委員に伝えましょう。
 ここでポイントとなるのは、離婚調停は裁判ではない、ということです。つまり、法律上は妻に支払いの責任がありますが、夫の事業のための借金なので、離婚後は夫に返済してもらいたいと強く主張すれば、調停委員が夫に伝えてくれ、夫が返済金額を事実上負担してくれる、という解決が出来る可能性もあるのです。

やってくれるのが当たり前

 自営業の夫の妻の手伝い及び家事に至るまで、年月が経つほど夫(や義両親)には「やってくれるのは当たり前」と認識されるようになります。
 しかし、そこまで自営業に踏み入れていると、月額の売上や自分(妻)の仕事内容等を考えると、おいそれと辞めるのは困難になります。
 なぜなら、離婚後の養育費や慰謝料の請求が難しい、ということがチラチラと見えてくるからです。
 上述のように、貯金すらままならない主婦にとっては、離婚後の資金繰りも難しいところです。

お金

離婚したらお金はどうなる?

 自営業の夫との生活に疲れ、離婚することに……。その場合、夫から金銭的な弁償を求めることは可能なのでしょうか。

①財産分与

 財産分与の対象となるのは、「夫婦の共有財産」に限られます。そのため、自営業=事業のための財産は、財産分与の対象にはなりません
 夫婦の共有財産については、その財産に対する名義ではなく、実質的に判断されます。

②慰謝料請求

 結論から申し上げると、夫が自営業であれ何であれ、慰謝料請求は可能です。
 慰謝料は、精神的苦痛に対する金銭授受で、平均は200万円程度とされています。
 自営業での慰謝料となると、例えば“事業が不安定な時にストレスにより暴力を受けた”、“仕事漬けで家にほとんどいない”、“生活費を渡してくれなくなった”等のケースが考えられます。

そもそも離婚は出来る?

 夫が離婚に応じなかったとしても、例えば上述の3例のような場合、離婚することは可能です。
 まず、暴力を振るわれた⇒有責配偶者として認定
 次に、ほとんど家にいない⇒夫婦関係の破綻
 最後に、生活費を渡さない⇒悪意の遺棄が成立
となります。
また、離婚事由である5要件である不貞行為・悪意の遺棄・3年以上の生死不明・回復の見込みのない強度の精神病・その他婚姻を継続しがたい重大な事由があった場合も離婚出来ます。

頭を抱えた女性

妻へのストレス

 自営業とは言え、繁盛している店とそうでない店があります。繁盛していれば、「こんなに頑張ったから収入が増えた」との喜びもありますが、そうでない場合、妻へのストレスは尋常なものではありません。

「ありがとう」はどこに行った?

 妻の手伝いがなければすぐにでも潰れそうな自転車操業状態(生花店・建設業・造園業・設計事務所・歯科医院・印刷業・割烹……等)にも関わらず、夫は妻の手伝いを当然のように扱い、謝辞の1つもなかったら、妻はどう思うのでしょうか。

収入よりも大事?夫のこだわり

 妻からの助言を一切受け付けないタイプが、妙なこだわりを持っている夫です。夫婦で協力するはずが、夫が完全に舵を取っていて、「季節柄こうしたら?」と提案しても、「俺は通年でやり通したい」等と、収益よりもこだわりを優先する店主にはもうあきらめるしかありません。

誰か上から叱ってください

 自営業=自分がトップ、ですから、夫のやり方が完全に間違っていても正してくれる人はいません。妻としては収入を増やすために外でパートとして働きたいと思っていても、夫が店を優先させ、結果的に財産が減っていくだけ。
 そんな状況で、明るい未来が見えるはずがありません。

夫の自己破産

 妻のストレスは絶頂。もう離婚するしかありません。しかしそうなると、上述のように自営業は廃業に。挙句夫が自己破産してしまう場合があります。

自己破産した夫からの慰謝料は

 自己破産したとしても、『慰謝料の原因』によって請求出来るかどうかが決まってきます。自己破産後も請求出来るケースが、夫が積極的に妻を傷つける意図があったというものです。
 例えば、夫が自営業のストレスで妻に暴力を振るったとすると、慰謝料請求が出来ます。

子どもの養育費

 養育費については、自己破産によって免責されることはありません。相手が自己破産をした後でも、養育費は安心して請求することが出来ます。
 妻にとって、養育費は子どもの将来を左右する大切な収入源です。請求はゆっくりでも出来ますので、相手が自己破産しても、あきらめずに交渉しましょう。

草原の夫婦

離婚に関する困りごとは弁護士へ相談を

結婚当初は「ずっと一緒にいられる」と思って嬉しいはずの自営業ですが、仕事と家庭が入り混じり、ストレスフルな状況に置かれることは少なくないでしょう。

妻の手を借りて営業を続けているようであれば、夫が離婚を受諾してくれる可能性も低いものとなります。

そのような際は、まず弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。
法律のプロである弁護士なら、個々の状況に合わせて相談に乗ってくれるだけでなく、離婚問題で起きやすいトラブルを未然に防いでくれます。

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