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離婚をしたら、『ペット』はどうなる?:“所有権”という考え方のアイキャッチ

離婚をしたら、『ペット』はどうなる?:“所有権”という考え方

離婚をしたら、『ペット』はどうなる?:“所有権”という考え方のアイキャッチ

 日本では昨今、15歳未満の人口より、犬と猫の飼育数の方が上回っている、ということはご存知でしょうか。そう、日本は今まさに、空前のペットブームなのです。
 しかし、まるで実子のようにペットに愛情を込めて育てる飼い主が離婚してしまう……!そんなケースも同時に増えています。
 離婚する際、ペットのための親権(所有権)をとるためにはどのような手段が考えられるかを見ていきましょう。

ペットの親権?

 まず、『ペット』の法的地位を見てみましょう。ペットは法律上、「モノ(=動産)」と見なされます。いくら飼い主が愛情を傾けていても、生物でない食器や家具と同等に扱われるため、そこに「親権」という概念はありません。あくまで、「所有権」なのです。(英語でも一昔前まではペットの代名詞はitでした。近年、heやsheが使われることが多くなったようです。)
 そして、モノとして見なされるとすると、離婚時にはペットは共有財産として、「財産分与」の対象となります。
但し、どちらかが結婚前から飼っていたペットは、特有財産(民法第762条:夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産とする)として扱われるため、財産分与の対象にはなりません。

財産分与におけるペットの特性

 以上のように財産分与の対象になるペットですが、財産分与の上ではどのように位置づけられているのでしょうか。

ペットの引き取り手

 離婚する夫婦がペットを譲らないと、最終的には裁判所が引き取り手を判定することもあります。それは、
飼育状況:ペットのお世話に関与している程度
ペットとの関係:どちらによりなついているか
ペットのこの期の飼育:離婚後に住む家、経済力、ペットと一緒にいられる時間
といった要素で判断されますが、法律上では「一切の事情を考慮」としか文言がないため、裁判所に大きな裁量が認められています。

ペットに金額をつける?

 財産分与としてペットを引き取った側は、ペットの評価額の半値を、他の財産から相手に譲らなくてはなりません。
 そこで問題となるのがペットの金額です。血統書つきの子犬ならまだしも、ペットとして馴染んだ動物に対して金額をつけることは非常に困難です。この点については、当事者同士で決めるしかないでしょう。

猫

所有権を手に入れる

 離婚協議では、ペットの所有権を手に入れるために、“自分の方が飼主としてふさわしい”と主張する必要があります。

○仕事:離婚後に生計を立てることが可能でしょうか?
・今後の仕事ぶりがペットの飼育に適しているか
・専業主婦/夫だった場合、就職出来るか
・ペットを飼育する経済的な余裕があるか

○健康:ペットだけでなく、自分のコンディションも重要です。
・自分に持病や通院している病気があるか
・ペットに持病や通院している病気があるか
・新しい環境の場合、ペットの健康保持に適しているか

○(新しい)家族:ペットは家族関係の変化に順応出来そうですか?
・再婚する場合、相手方はペットの飼育に前向きか
・(人間の)赤ちゃん等、ペットにストレスを与え得る存在はないか
・住む場所により、先住犬/猫との相性に問題はないか

○新住居:ペットと一緒に気兼ねなく暮らすために…。
・ペットOKの物件か
・過去にトラブルは起きていないか

○飼育の貢献度:日頃の飼育のイニシアティブはどちらが握っていたか
・飼主登録はどちらの名義か
・今まで飼育に積極的に取り組んできたか
・虐待したことはないか
・ワクチン摂取に動物病院に連れて行っていたのはどちらか

○その他:ペットとの具体的な関係性を見てみます。
・ペットの取得経緯
・どちらになついているか
・ペットコミュニティへの参加状況
・精神的な支え
・ペットの面会交流権を設定するか

悲しい現実に迫る

 喉から手が出るほどペットの所有権を得たい、と思う人がいれば、残念ながら全くそう思わない夫婦もいます。しかし、いかにペットを押し付け合ったとしても、ペットのお世話は人間の義務です。
 民法では「モノ」でしたが、動物愛護法にはペットに対する飼育の上でのルールと、それを犯した場合の刑事罰が規定されています。

動物愛護法 行為 法定刑
44条② 給餌・給水をしないこと 罰金100万円以下
44条② 健康・安全環境の悪い状態で拘束・衰弱させること 罰金100万円以下
44条② 飼育中に疾病・負傷⇒適切な保護をしないこと 罰金100万円以下
44条③ 遺棄すること 罰金100万円以下

 このような動物愛技法の規定はあるものの、検挙率は増加の一途を辿っています。

動物虐待検挙数の推移

 また、飼えないものは飼えない、と開き直って、昨日まで家族だった存在を、殺処分センターに持ち込む飼主も後を絶ちません。
 猫は小さなプラスチックのキャリーバッグに詰められ、犬は鉄格子で作られた牢屋のようなコンクリート施設に閉じ込められ、殺される順番を待っています。

犬

晴れて所有権を奪取したら

 引き取ることが可能となったら、嬉しさの反面、不安を抱く方も少なくないでしょう。そのような心配を少なくするために、2つのポイントを押えましょう。

ペットの『養育費』

 ペットは動産ではあるものの、生きています。そのため、餌代からワクチン、場合によって動物病院で手術、等ということも考えられます。
 特にペットは医療保険等に入っていることが未だ少ないため、病気になった時、保険がありません。よって、手術ともなれば金額は跳ね上がります。
 しかし、どれだけ可愛がっても「モノ」に変わりはありませんので、元配偶者への金銭の要求は一切出来ません。
 その代わりというわけではありませんが、相手方から面会要求を受けた場合、返信はおろかスルーで構いません。そのような権利は存在しないためです。

取り決めは書面に残す

 協議離婚においては、双方の合意があり公序良俗違反でなければ、どんな契約でも認められる、といっても過言ではありません。
 ですので、離婚の際には、財産分与や子どもについて、プラスペットについてもしっかりと書面に残しておきましょう。

実践しやすい元配偶者との『交渉』術

 以上、養育費の要求も、面会も認められないとご説明しました。
 ですが、ここで、『交渉』する余地が出来たことにはお気づきになったでしょうか。そう、○と○は、●と●にすることが可能なのです。

離婚協議書

 財産分与、子、ペットについても書面を残すこと、と申し上げましたが、特におすすめしたいのが、『離婚協議書』にその旨を書き込んでおくことです。
 その目的は、法的には認められていなくとも、あくまで当事者間だけの契約を設定するためです。

○と○、●と●

 トリッキーな言い方ではありますが、養育費の請求も面会権もないのであれば、養育費の請求を可能にして、代わりに面会権も付与すればお互いのニーズがマッチします。この方法をとれば、お互いにとってメリットのある契約を結ぶことが出来る、と言えるでしょ
う。
 但し気をつけていただきたいのが、ペット自身のストレスです。特に面会においては、「どうして少ししか会えないのか」「自分を置いていってしまうのか」等、ペットにとってつらい思いをさせかねません。
 ですので、ペットに対して無理のない、ストレスフリーな方法を、離婚協議の際に考えておくことがとても大切です。

離婚協議書の条項の記載方法

 書き方としては、人間の子ども(親権・面接権)と変わりはありません。その中では、
・面会の場所(どちらの自宅か)
・宿泊の可否
・宿泊時の食事用意
・ペットの移動と変換方法
を取り決めましょう。ではここで、記載例をご覧ください。

第○条(ペットの飼育費)
甲は乙に対し、愛犬△△の飼育費として平成○年○月から△△が死亡するまで、1ヶ月○○○○円ずつ、毎月末日までに乙が指定する下記口座に振り込むこととする。

第○条(ペットの面接交渉)
(1)乙は甲に対し、甲が1ヶ月に1日、愛犬△△と甲自宅にて面接交渉することを認める。
(2)面接交渉の日時、愛犬△△の受け渡し方法は、甲乙お互いに協議して定める。

終わりに

 本当の子どものように大切に思うからこそ、人間の事情でペットを振り回してしまうことは最小限に抑えたいもの。アメリカでは、ペットの飼主双方が弁護士を立てることも珍しくないそうです。
 少子化が進む日本においても、ペット事情はこれからますます大きな問題となっていくでしょう。ペットが「モノ」として扱われなくなるような民法等の法律の整備も、そう遠い話ではないのでは、と感ぜられます。

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